2024年度 | 観光事業に関する自治体実態調査 概要
調査目的
各自治体における観光事業やプロモーション活動の実態を把握するための調査です。
あわせて、本調査結果を今後の観光プロモーション活動などにお役立ていただくことも目的としています。
※ 2018年度より毎年実施
調査期間
2024年(令和6年)4月22日 ~ 6月14日
調査対象
全国1,741自治体(市町村および東京23区)
調査方法
全国の自治体の観光事業担当部署にメール・FAXで調査依頼を発信
回答はWebのフォームとFAXにて回収し単純集計
回収状況
回答数:720票
回収率:41.36%
本調査結果は、回答者を特定されない形で集計加工したデータであり、一定数以上の回答を得られた情報を掲載しています。
01. コロナ前を基準にした昨年度の観光客数の増減
観光客数の増減についての内訳
(N=702)
観光客数の増減 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
コロナ前より増えた | 17% | 118 |
コロナ前と同じくらいに戻った | 34% | 236 |
コロナ前の約7割〜9割 | 43% | 304 |
コロナ前の約4割〜6割 | 5% | 37 |
コロナ前の約1割〜3割 | 1% | 7 |
観光客数の増減の比較:2024年度と2023年度の比較
「コロナ前の水準に回復した」、あるいは「コロナ前より増えた」自治体の合計の割合は、2023年度調査の115自治体(18%)から2024年度調査では354自治体(5割超)と大幅に増加した。「コロナ前の約4割〜6割」以下の自治体の割合は44自治体(6%、2023年度比11.7ポイント減)と大きく減少している。2024年度に入り、行動制限の解除や水際対策の緩和が進んだこと、また、円安の影響なども、観光需要の回復を後押ししたと考えられる。
これらの結果から、日本国内の観光産業はコロナ禍からの回復基調を強めていることがうかがえる。しかし、2024年度調査でも依然として348自治体(約半数)はコロナ前の水準に達していない。
02-1. これまでのGoToトラベル事業や観光庁等における補助事業を活用した内容もしくは活用を検討した内容
GoToトラベル事業や観光庁等における補助事業の活用、活用検討をどのような内容で行ったかの内訳
(N=532)
補助事業の活用内容(上位5選)
補助事業の活用内容(上位5選) | 回答数 |
---|---|
パンフレットやマップの作成 | 180 |
各種イベントの開催 | 153 |
旅行商品や体験プログラムなどの造成 | 142 |
PR動画の作成 | 139 |
観光案内板やデジタルサイネージの設置 | 132 |
補助事業の活用内容では、「パンフレットやマップの作成」に補助事業を活用した自治体が180件と最も多く、次いで「各種イベントの開催」が153件、「旅行商品や体験プログラムなどの造成」が142件、「PR動画の作成」が139件、「観光案内板やデジタルサイネージの設置」が132件の順である。
従来型の広報活動であるパンフレットやマップの作成、PR動画の作成、観光案内板やデジタルサイネージの設置は、引き続き多くの自治体に活用されていることがわかる。
また、「各種イベントの開催」や「旅行商品や体験プログラムなどの造成」といった体験型コンテンツに関連する項目への活用も見られる。
補助事業の活用検討内容
補助事業の活用検討内容(上位抜粋) | 回答数 |
---|---|
旅行商品や体験プログラムなどの造成 | 109 |
地域のブランディング | 109 |
機材の整備(決済システムや翻訳機など) | 108 |
施設の整備(公衆トイレや観光案内所など) | 105 |
観光案内板やデジタルサイネージの設置 | 104 |
インフラの整備(Wi-Fi環境や二次交通など) | 104 |
海外プロモーション | 104 |
観光資源のブラッシュアップ | 103 |
ワーケーションの推進 | 102 |
通訳やガイドなどの人材育成 | 101 |
補助事業の活用を検討した項目として、「旅行商品や体験プログラムなどの造成」と「地域のブランディング」が109件と最も多く、次いで「機材の整備(決済システムや翻訳機など)」が108件、「施設の整備(公衆トイレや観光案内所など)」が105件と続いた。
これらの結果から、多くの自治体において、体験型コンテンツへの投資や地域ブランドの確立といった、観光客のニーズに対応した魅力的な観光コンテンツの開発・整備が検討されていることがうかがえる。
また、「インフラの整備(Wi-Fi環境や二次交通など)」104件、「海外プロモーション」104件、「通訳やガイドなどの人材育成」101件といった項目も上位に挙げられた。
補助事業活用状況の変化:2024年度と2023年度の比較
「旅行商品や体験プログラムの造成」、および「各種イベントの開催」に対する補助事業の活用が増加していることが示されています。体験型コンテンツへの投資を強化している自治体が多く見られた。
また、「地域のブランディング」に関する補助事業の活用検討も増加しており、観光客誘致競争が激化する中で、地域独自のブランド確立による差別化を図ろうとしていることが示唆される。
02-2. これまでのGoToトラベル事業や観光庁等における補助事業を活用しなかった主な理由および今後の方針
GoToトラベル事業や観光庁等における補助事業を活用しなかった主な理由の内訳
(N=315)
補助事業を活用しなかった主な理由 | 回答数 |
---|---|
予算不足 | 102 |
自治体の独自予算やその他の予算を活用 | 100 |
人材不足 | 99 |
コロナ交付金など別の補助金を活用 | 83 |
他の事業と比較して優先順位が低かった | 52 |
観光が主たる産業ではない | 48 |
要件の合う内容や該当する補助事業がなかった | 43 |
ノウハウがなくエントリーできなかった | 33 |
効果が見込めなかった | 14 |
エントリーしたが不採択 | 11 |
その他 | 6 |
補助事業を活用しなかった理由として、「予算不足」が102件と最も多く挙げられ、次いで「自治体の独自予算やその他の予算を活用」が100件、「人材不足」が99件と続いた。これらの結果から、多くの自治体にとって、補助事業の活用には財政的な制約や人材面の課題が伴うことが示された。
「コロナ交付金など別の補助金を活用」を選択した自治体も83件あり、国が推進する補助事業とは別に、独自の財源や他の補助金を活用し、地域独自の観光戦略を展開しようとする自治体の意向もうかがえる。
「他の事業と比較して優先順位が低かった」が52件、「観光が主たる産業ではない」が48件と、観光事業の位置付けや優先順位も、補助事業活用に影響を与えている可能性がある。
また、「要件の合う内容や該当する補助事業がなかった」が43件、「ノウハウがなくエントリーできなかった」が33件、「効果が見込めなかった」が14件、「エントリーしたが不採択」が11件と、補助事業制度への理解不足や、申請・運用に関するノウハウ不足、効果に対する不確実性なども、補助事業活用を阻む要因となっている可能性が示唆される。
今後の方針
(N=686)
今後の方針 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
積極的に実施したい | 22% | 151 |
実施したい | 59% | 408 |
実施する予定はない | 19% | 127 |
今後、補助事業を「積極的に実施したい」と回答した自治体は151自治体、「実施したい」と回答した自治体は408自治体であり、全体の約7割(559自治体)を占めていることから、補助事業への期待の高さがうかがえる。
一方で、「実施する予定はない」と回答した自治体も127自治体(約2割)存在する。これらの自治体の中には、補助事業活用以外の方法で観光振興に取り組む意向の自治体もあれば、観光振興自体に消極的な自治体も含まれていると考えられる。
補助事業活用に対する課題と関心の変化:2024年度と2023年度の比較
GoToトラベル事業や観光庁等における補助事業を活用しなかった主な理由の比較
2023年度と比較して、2024年度は「予算不足」を理由に挙げた自治体が74件から102件へ28件増加し、「人材不足」は78件から99件へ21件増加しており、これらの課題が顕在化していることがうかがえる。
今後の方針の比較
2023年度と比較して、2024年度は「積極的に実施したい」と回答した自治体が103自治体から151自治体へ48件増加しており、コロナ禍からの観光需要回復に伴い、補助事業への期待が高まっていることがうかがえる。
しかし、「実施する予定はない」と回答した自治体は135自治体から127自治体へ8件減少したものの、依然として補助事業活用に慎重な姿勢を示す自治体が一定数存在することが示された。
03. 多言語化の実施状況とその対応言語
多言語化の実施状況とその対応言語の内訳
(N=548)
販促物や掲示物:言語(上位5選) | 回答数 |
---|---|
英語 | 470 |
中国語-繁体字 | 296 |
中国語-簡体字 | 291 |
韓国語 | 228 |
タイ語 | 48 |
デジタルコンテンツ:言語(上位5選) | 回答数 |
---|---|
英語 | 285 |
中国語-繁体字 | 207 |
中国語-簡体字 | 203 |
韓国語 | 179 |
タイ語 | 64 |
販促物・掲示物では、対応言語が多い順に英語(470件)、中国語-繁体字(296件)、中国語-簡体字(291件)、韓国語(228件)となっている。
デジタルコンテンツでは、英語(285件)、中国語-繁体字(207件)、中国語-簡体字(203件)、韓国語(179件)の順に多い。
これらの言語は、いずれも訪日外国人旅行者数の上位を占める国・地域の言語である。このことから、多くの自治体が主要なインバウンド市場をターゲットとした多言語化に取り組んでいることが読み取れる。
多言語対応の変化:2024年度と2023年度の比較
2023年度と比較して、2024年度は全ての言語において、販促物・掲示物、デジタルコンテンツともに対応自治体数が増加した。
販促物・掲示物においては、英語対応が416件から470件へ54件増加、中国語-繁体字は253件から296件へ43件増加、中国語-簡体字は276件から291件へ15件増加した。
デジタルコンテンツにおいては、英語対応が258件から285件へ27件増加、中国語-繁体字は184件から207件へ23件増加、中国語-簡体字は178件から203件へ25件増加した。
2023年度調査時はコロナ禍の影響でインバウンド観光客数が大幅に減少していたが、2024年度に入り、水際対策の緩和や円安の影響などもあり、インバウンド需要が回復傾向にある。この需要回復を見据え、多くの自治体が英語圏および中国語圏からの観光客誘致を強化するために、多言語化対応を積極的に進めていることが示唆される。
04. 機械翻訳の活用状況および機械翻訳に対するイメージ
機械翻訳の活用状況の内訳
(N=685)
機械翻訳の活用状況 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
活用している | 19% | 131 |
活用を検討中 | 25% | 173 |
活用する予定はない | 56% | 381 |
機械翻訳の活用状況について、685自治体のうち、「活用している」と回答した自治体は131自治体(19%)、「活用を検討中」は173自治体(25%)であった。
一方で、「活用する予定はない」と回答した自治体は381自治体(56%)と依然として半数を超えており、多くの自治体が機械翻訳の活用に慎重であることがわかる。
機械翻訳に対するイメージの内訳
(N=684)
機械翻訳の活用状況 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
エンジンも賢くなってきており、機械翻訳で十分 | 16% | 107 |
意味が通じれば、 多少の翻訳間違いは問題ない | 43% | 297 |
機械翻訳を信用しているが、 人による翻訳が望ましい | 33% | 224 |
完璧ではない以上、 機械翻訳は控えたい | 8% | 56 |
機械翻訳のイメージについては、「意味が通じれば、多少の翻訳間違いは問題ない」と回答した自治体が297自治体(43%)と最も多かった。
「機械翻訳は信用しているが、人による翻訳が望ましい」と回答した自治体は224自治体、「完璧ではない以上、機械翻訳は控えたい」と回答した自治体は56自治体であった。これらの結果から、機械翻訳の精度向上を認識しつつも、完璧な翻訳を求める声が依然として根強いことがうかがえる。
機械翻訳活用の変化:2024年度と2023度年の比較
機械翻訳の活用状況の内訳の比較
機械翻訳の活用状況は、2023年度と比較して大きな変化は見られなかった。依然として多くの自治体が機械翻訳の活用に慎重な姿勢を示している。
機械翻訳に対するイメージの内訳の比較
機械翻訳に対するイメージは、2023年度と比較して、大きな変化は見られませんでした。
機械翻訳に対するイメージは、2023年度と比較して、大きな変化は見られなかった。
機械翻訳の精度は年々向上しているものの、正確性や自然さといった点で、依然として人による翻訳を重視する傾向が強いことがうかがえる。
05-1. 情報発信のプラットフォームおよびSNS運用の課題
SNSの運用状況および運用しているプラットフォームについての内訳
(N=708)
SNSの運用プラットフォーム(上位5選) | 回答数 |
---|---|
605 | |
488 | |
X (旧:Twitter) | 391 |
YouTube | 353 |
LINE | 251 |
「Instagram」を活用している自治体は605件、次いで、「Facebook」が488件、「X(旧: Twitter)」が391件、「YouTube」が353件の順となった。
Instagram、Facebook、X、YouTubeといった主要なSNSプラットフォームは、画像や動画による情報発信に強く、視覚的に訴求力の高いコンテンツを配信できる点が特徴である。
「LINE」が251件活用されており、情報発信だけでなく、クーポン配信や観光案内など、双方向のコミュニケーションツールとしての活用も期待される。
情報発信のプラットフォームおよびSNS運用の課題についての内訳
(N=678)
SNS運用の課題 | 回答数 |
---|---|
人材不足 | 327 |
効果的な投稿ができているか検証しづらい | 311 |
行政として民間事業者を公平に紹介しづらい | 268 |
投稿するネタや写真などの素材不足 | 263 |
担当者によって投稿内容に差が出る | 229 |
業務時間外にも対応が必要となる | 163 |
適切な投稿文の作成が難しい | 156 |
決裁や各課との調整などで投稿までに時間がかかる | 124 |
その他 | 12 |
SNS運用における課題の上位は、「人材不足」が327件と最も多く、次いで「効果的な投稿ができているか検証しづらい」が311件、「行政として民間事業者を公平に紹介しづらい」が268件であった。
人材不足の背景には、コロナ禍の影響による財政難や人材流出、構造的な問題などが考えられる。
効果測定や公平性確保といった課題については、従来から指摘されてきたものの依然として解決には至っておらず、SNS運用に関する専門知識やノウハウを持つ人材の育成、効果測定ツールの導入、民間事業者との連携体制の構築など、多角的な取り組みが必要と考えられる。
SNS運用状況の変化:2024年度と2023年度の比較
SNSの運用状況および運用しているプラットフォームについての比較
2023年度と比較して、2024年度は「Instagram」、「Facebook」、「YouTube」、「LINE」の活用が増加傾向にある。
特にInstagramは、2023年度の459件から2024年度は605件と146件増加しており、視覚的な訴求力の高いコンテンツを通して、観光客誘致を図る動きが加速していると考えられる。
Facebookは54件、YouTubeは37件、LINEは86件それぞれ増加している。
情報発信のプラットフォームおよびSNS運用の課題についての比較
2024年度調査では、SNS運用における上位の課題として「人材不足」「効果的な投稿ができているか検証しづらい」「行政として民間事業者を公平に紹介しづらい」が挙げられ、これらは2023年度と比較して増加している。その他の課題も全体的に増加傾向にある。
「人材不足」は2023年度の270件から2024年度は327件へと57件増加し、「効果的な投稿ができているか検証しづらい」は261件から311件へと50件、「行政として民間事業者を公平に紹介しづらい」は254件から268件へと14件増加している。
その他の課題については、「投稿するネタや写真などの素材不足」が285件から263件へと22件減少している一方で、「担当者によって投稿内容に差が出る」は181件から229件へと48件増加している。
「業務時間外にも対応が必要となる」は145件から163件へと18件、「適切な投稿文の作成が難しい」は119件から156件へと37件、「決裁や各課との調整などで投稿までに時間がかかる」は116件から124件へと8件増加している。
これらの結果から、SNS運用にはマーケティングや広報、コンテンツ制作、データ分析など、多岐にわたる知識やスキルが求められており、専門知識を持つ人材の育成・確保、成功事例の情報共有がますます重要になると考えられる。
05-2. SNSの運用における効果的な投稿内容や成功例など
SNS運用において、どのような投稿が効果的だったのか、実際に観光客増加に繋がった成功事例などを調査しました。
※回答の一部を抜粋
SNSの運用における効果的な投稿内容
成功例【結果】
SNS運用における効果的な投稿内容としては、「市にゆかりのある著名人にPRを委託する」「ゆるキャラのプロモーションを行う」「各種キャンペーンを実施する」「季節感のある内容の投稿を行う」「イベントの告知や開催中のリアルタイム投稿を行う」など、多岐にわたる事例が挙げられている。
これらの投稿により、「集客数や売上の増加」「リーチ数やインプレッション数の増加」「コメント数の増加」「ホームページへの訪問数の増加」「地域の知名度の向上」といった成果に繋がった事例も見られる。
これらの事例は、SNSが観光客とのエンゲージメントを高め、地域の魅力を効果的に伝えるための重要なマーケティングツールとなり得ることを示唆している。SNSの活用は短期的な成果だけでなく、長期的な地域ブランドの構築にも寄与する可能性がある。継続的な情報発信を通じて、地域の魅力を広く伝え、観光客のリピート訪問を促すことが期待される。
06. 観光DXの取り組み状況および取り組めていない理由もしくは取り組む予定のない理由
観光DXの取り組み状況についての内訳
(N=702)
観光DXの取り組み状況 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
取り組んでいる | 11% | 81 |
取り組む予定 | 14% | 96 |
実施できていない | 53% | 373 |
取り組む予定はない | 22% | 152 |
観光DXの取り組み状況について、「取り組んでいる」と回答した自治体は81自治体(11%)、「取り組む予定」は96自治体(14%)にとどまり、過半数を占める373自治体(53%)が「実施できていない」と回答し、「取り組む予定はない」が152自治体(22%)であった。このことから、観光DXの取り組みは、まだ初期段階にあると考えられる。
観光DXに取り組めていないもしくは取り組む予定のない理由
(N=545)
理由 | 回答数 |
---|---|
予算不足 | 337 |
人材不足 | 313 |
何をしていいかわからない | 221 |
DXの必要性を感じない | 39 |
その他 | 26 |
観光DXに取り組めていない、または取り組む予定がない理由として、「予算不足」と回答した自治体が337自治体、「人材不足」は313自治体と、財政的な制約や人材面の課題が大きな障壁となっていることがわかる。
また、「何をしていいかわからない」と回答した自治体が221自治体おり、観光DXに対する理解や具体的な導入イメージが、まだ十分に浸透していない可能性が示唆される。
その他回答の詳細
その他の主な回答 |
---|
観光DXとは何か、そもそもDXが何か、わかっていない |
他の施策より優先度が低い |
事業所の高齢化 |
町単体ではなく管内一体で実施するのが効果的と考える |
観光DXに取り組む構想がない |
観光が主たる産業ではない |
手法などについて検討できていない |
コストに見合うリターンをつくることが難しい(費用対効果) |
その他の回答として、「観光DXとは何か、そもそもDXが何か、まだ十分に把握できていない」「観光DXに取り組む構想がない」「手法などについて検討できていない」といった意見が挙げられた。
また、「他の施策より優先度が低い」「観光が主たる産業ではない」「コストに見合うリターンをつくることが難しい(費用対効果)」といった回答からは、観光DXの必要性を認識しつつも、費用対効果や優先順位の観点から、観光DXへの投資判断が難しい現状がうかがえる。
これらの回答は、観光DXの理解を深めるための情報提供や、具体的な導入イメージを掴めるような事例共有、費用対効果を明確化するなど、更なる検討が必要であることを示唆している。
観光DXの取り組み状況の変化:2024年度と2023年度の比較
観光DXの取り組み状況についての比較
観光DXに取り組めていないもしくは取り組む予定のない理由の比較
2023年度と比較して、2024年度は「取り組んでいる」自治体の割合が9%から11%へ2.5ポイント、「取り組む予定」の自治体の割合が12%から14%へ2ポイント増加しており、観光DXに取り組む、あるいは検討する自治体はわずかに増加している。しかし、その増加幅は大きくなく、依然として多くの自治体にとって、観光DXへの取り組みには多くの課題があると考えられる。
観光DXに取り組めていない、もしくは取り組む予定のない理由について、2024年度は「予算不足」と回答した自治体が278件から337件へと59件増加し、「人材不足」は279件から313件へと34件増加した。これらの課題は深刻化していることがうかがえる。
07. 観光事業の推進における課題
観光事業の推進における課題についての内訳
(N=714)
観光事業推進における課題(上位5選) | 回答数 |
---|---|
人材不足 | 455 |
予算不足 | 397 |
公共交通が行き届いていない(二次交通対策) | 397 |
宿泊施設が無い/少ない | 354 |
観光地としての認知度が低い | 338 |
観光事業推進における課題として、「人材不足」を挙げた自治体が455件と最も多く、次いで「予算不足」397件、「公共交通が行き届いていない(二次交通対策)」397件、「宿泊施設が無い/少ない」354件、「観光地としての認知度が低い」338件と続いた。
観光事業推進における課題の変化:2024年度と2023年度の比較
2023年度と比較して、2024年度も「人材不足」「公共交通が行き届いていない(二次交通対策)」「宿泊施設が無い/少ない」「観光地としての認知度が低い」「予算不足」が上位5つの課題として挙げられており、これらの課題解決が依然として重要なテーマとなっていることがわかる。
「人材不足」は337件から455件と118件増加、「予算不足」は303件から397件と94件増加、「公共交通が行き届いていない(二次交通対策)」は329件から397件と68件増加、「宿泊施設が無い/少ない」は321件から354件と33件増加、「観光地としての認知度が低い」は303件から338件と35件増加している。
08. 観光事業の推進における官民連携の状況とそのお相手
観光事業の推進における官民連携の状況についての内訳
(N=639)
観光事業の推進における官民連携の状況 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
連携している | 43% | 302 |
連携を検討中 | 30% | 213 |
連携する予定はない | 27% | 191 |
官民連携の状況について、「連携している」と回答した自治体は302自治体(43%)、「連携を検討中」は213自治体(30%)であり、多くの自治体で官民連携が推進されている、あるいは推進されようとしていることがうかがえる。
一方、「連携する予定はない」と回答した自治体は191自治体(27%)であった。
観光事業の推進における官民連携のお相手の内訳
(N=425)
官民連携の相手として最も多いのは「観光協会」であり、307件となった。
次いで、「DMO(Destination Management/Marketing Organization)や観光推進機構」が178件、「観光事業者」が137件、「宿泊事業者」が126件の順で多い。
その他にも、飲食事業者、交通事業者、広告事業者、IT事業者、地域ボランティア、各種協議会・組合・団体など、様々な主体との連携が行われている。
官民連携の現状と変化:2024年度と2023年度の比較
観光事業の推進における官民連携の状況についての内訳の比較
観光事業の推進における官民連携のお相手の内訳の比較
2023年度と比較して、2024年度は「連携している」自治体の割合が45%から43%へ2ポイント減少し、「連携を検討中」の自治体の割合が25%から30%へ5ポイント増加した。「連携する予定はない」と回答した自治体の割合は30%から27%へ3ポイント減少した。
連携相手については、「観光協会」と連携している自治体が288件から307件へ19件増加し、「DMOや観光推進機構」は147件から178件へ31件増加した。
一方で、「商工会議所」と連携している自治体は143件から128件へ15件減少している。
観光協会やDMOは、地域全体の観光振興を図る上で中心的な役割を担っており、これらの団体との連携強化は、より効果的な観光事業推進に繋がる可能性が高い。コロナ禍などで変化した観光ニーズに対応した新たな観光商品やサービスの開発、効果的なプロモーション活動の実施などが期待される。
09. 観光事業の推進における広域連携の状況とそのお相手
観光事業の推進における広域連携の状況の内訳
(N=698)
観光事業の推進における広域連携の状況 | 構成比 | 回答数 |
---|---|---|
連携している | 38% | 265 |
連携を検討中 | 26% | 184 |
連携する予定はない | 36% | 249 |
広域連携の状況について、698自治体のうち、「連携している」と回答した自治体は265自治体(38%)、「連携を検討中」は184自治体(26.4%)であった。
観光事業の推進における広域連携のお相手の内訳
広域連携の相手として最も多いのは「近隣自治体」で289件。次いで「都道府県」が105件、「DMOや観光推進機構」が101件、「広域連携協議会」が72件、「県外の自治体」が64件と続いた。
その他にも、沿線の自治体、姉妹都市、海外の自治体、官公庁、ツーリズムビューロー、コンベンションビューローなど、様々な主体との連携が行われている。
広域連携の現状と変化:2024年度と2023年度の比較
観光事業の推進における広域連携の状況の比較
(N=339)
2023年度と比較して、2024年度は「連携している」と回答した自治体の割合が42%から38%へ4ポイント減少し、「連携を検討中」の割合が23%から26%へ3ポイント増加した。「連携する予定はない」は35%から36%へ1ポイント増加した。
広域連携の状況は、2023年度と比較して大きな変化は見られない。
観光事業の推進における広域連携のお相手の比較
連携相手については、「近隣自治体」との連携が259件から289件へ30件、「都道府県」が98件から105件へ7件増加した。
一方で、DMOや観光推進機構との連携は83件から61件へ22件減少し、「広域連携協議会」との連携は68件から35件へ33件減少した。
2024年度の調査では、コロナ禍前と比較した昨年度の観光客数の増減について、以下の結果が得られた。
調査対象の702自治体のうち、約半数以上(354自治体)が観光客数がコロナ前の水準に回復、またはそれを上回っていることが明らかとなった。この結果は、国内旅行需要の堅調さやインバウンド観光の回復が要因と考えられる。
一方で、依然としてコロナ前の水準に達していない自治体が、348自治体(49%)存在することも明らかになった。